SWITCH INTERVIEW with NARA YOSHITOMO
SWITCH INTERVIEW with NARA YOSHITOMO
脳裏にある風景に寄せて
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写真:今井智己 文:猪野 辰

青森県弘前市吉井酒造煉瓦倉庫。奈良美智とgrafの展覧会『Yoshitomo Nara+graf A to Z』。この展覧会は、大阪をベースに東京・ロンドンにもオフィスを持ち、家具製作をはじめさまざまな活動をしているクリエイティブユニットgrafと奈良が、二〇〇三年の『S.M.L』展を出発点に行なってきたコラボレーションの集大成でもある。もともと「AからZまで二十六の小屋を完成させる」というコンセプトでスタートしたこの展覧会だが、現状ではそれよりも遥かに多い四十四軒の“小屋”が倉庫の内部に林立している。そして小屋と小屋の間にはやがて路地ができ、広場ができる。つまり、大きな倉庫のなかに夜の街が出現しているのだ。その光景はファンタジックであり、どこかノスタルジックでもある。ファンタジーとリアリティが不思議な形で交差している“街”で、奈良は語り始める。

 青森県弘前市吉井酒造煉瓦倉庫。七月十三日。奈良美智とgrafの展覧会『AtoZ』のオープニングまであと二週間を切ったこの日、プレス向けに作業中の現場を公開し、午後には奈良とgrafの豊嶋秀樹による記者会見が行われた。

「故郷で三回目の展覧会になりますが、今の心境はどんなものですか」という記者の質問に奈良が答えている。

「これまで二回ここでやらせてもらったんですけど、それに比べても、あるいは僕が日本の他の美術館でやった大きな展覧会と比べても、今回が最大規模です。僕はここのオーナーである吉井さんという方と出会って、こうして展覧会をさせていただいているわけですが、いつもここを気軽に使い続けられるというわけではないんです。だから今回、僕と一緒に小屋を作ってきた皆と一緒に、今までやってきたすべての経験をもとに、本当に全力投球でやれる限りのことをやって、ここを使うのはこれで最後にしようと思っています。最後にふさわしいくらい全力でやろうという意気込みで」

 その意気込みを切実に表現するため、奈良はちょうどこの会見の直前に行ってきた歯医者について話した。

 「僕は歯医者が大嫌いです。たぶん誰もが嫌いだと思うんですけど。小さい頃のトラウマがあるので、絶対行くまいと心がけていたんです。四日ぐらい前から痛み出したので、鎮静剤を飲んだりしてちょっと痛みを抑えて、頑張って働いたりしていました。でも、昨日はサロンパスを顎から首にかけて五枚ぐらい貼って、薬を倍くらい飲んでも効かなくなって……。今日いよいよ意を決して、でも怖かったので友達に付いて来てもらって、行ってきました。注射打たれてガーッとやられて。でもその痛みに耐えられる自分がすごく不思議で。僕にとって今までは歯の痛みイコール人生最大の痛みみたいなものだったんですけど。それが“これから頑張らなきゃいけない”と考えたときに、すごく真剣に耐えていたんですよ。つまり、それくらいの意気込みです」

 その答えに会場は笑いに包まれたが、奈良にとっては笑いごとではないようだった。

「もうラストスパートなんですけど、とにかくやらなきゃいけないことは山ほどあって、もうパニックになって昨日いろいろ書き出してみたら、本当に山ほどあったんです。一分一秒たりとも、と思うんですけど。いつも思うのは、なんか急に時間の密度が濃くなっていく。だから三カ月前の一日と現在の一日とでは密度が全然違います。四十八時間でやるようなことを二十四時間でやっている。そういう集中力みたいなものがどんどん高まってきています。それはボランティアの皆も同じだと思います」

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