スティーブン・クライン
スティーブン・クライン
世界最強のアイコンを撮る

写真:依田純子 文:猪野 辰

PROFILE

マドンナと写真家の邂逅

 2006年のワールドツアーにおいて、マドンナはある仕掛けによってまたも世界中のあらゆる場所で物議を醸した。キリストを模した十字架の磔をステージ上で敢行し、キリスト教教会などから強い非難を浴びた。マドンナによるこの手の社会に対する挑発は、もちろんいまに始まったことではない。八〇年代に「ライク・ア・バージン」や「マテリアル・ガール」でブレイクして以来、つねにそれは繰り返されてきたし、二十年以上もの長い年月、「世界最強のアイコン」であり続けることを可能にしてきたのは、まさにその「挑発」のインパクトに他ならない。

 写真家スティーブン・クラインがマドンナと出逢ったのは、二〇〇二年のことだった。ロンドンで演劇に出演していた彼女をバックステージに訪ねた直後に、マドンナ本人から電話があり、彼女とのコラボレーションに興味があるかと誘われた。

 スティーブンは、ファッションブランドの広告写真や『VOGUE』『W』といったファッション誌での仕事で知られる一方、各地の美術館やギャラリーで展示されるなどファインアートの世界でも注目を浴びている。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーをいち早くカップルとして雑誌『W』のカバーストーリーで撮影したことは記憶に新しいし、9・11の直前にジャスティン・ティンバーレイクを雑誌で撮影したときも、星条旗がプリントされたシャツを着た彼の顔に血が飛び散っているような写真を撮ってお蔵入りになっている。そんなふうに、セレブリティをセンセーショナルに切り取る才能を持つスティーブンとマドンナの邂逅は、ある意味必然ともいえる出逢いだったのかもしれない。

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