
身体の中で循環させる「想い」
「ちゃんとした自覚を持って世の中に伝えていこう、みたいなことは僕はもうあまり思っていないんです」
インタビューを始めて桜井和寿が最初に発したのは、そんな意外な言葉だった。今やミスター・チルドレンのファンや音楽好きだけでなく、一般的にも広く認知されるようになってきたap bankでの活動をはじめ、ミスター・チルドレン(桜井和寿)を、社会的なメッセージを積極的に伝えていこうとするバンドだと思っている人も多いかもしれない。もちろんそれは彼らの持っているひとつの側面には違いないのだけれど、今の彼はそうしたメッセージの発信者的なニュアンスからは距離を置こうとしている。そして、より純粋な姿勢で「音楽」に向き合おうとしている。
「でも、生活していく中で“想い”はちゃんとあるので……なんかメロディが生まれてくるときっていうのは、その想いにすごく近い響きや音のようなものがまず生まれてきて、それを身体の中でこう……何て言うんだろう、何度も何度も循環させていくと、そのメロディに言葉が引っかかってきて、それでどんどん言葉ができていくんです」
はじめにメッセージありき、ではなく、まずは漠然とした想いとメロディが重なり合うようにして現れ、徐々に形となっていく。そこに込められているのは、桜井曰く「敢えて人に言うほどのことじゃないなあ」という、どこにでもある感情の一片だ。
「ap bankというものが、ある種すごくメッセージを投げかけるプロジェクトはあるんだけれど……環境ってバランスが取れてなんぼのものだと思っていて、環境に良いことだけを突き詰めてやっても、きっと良い結果は生まれないと思うんです。それによって何か極端な、別のところが歪んできたりすると思うので。それよりも僕は全体を見ていくこととか、もっと曖昧にぼやけさせることとか、そういうことが大事だと思っていて。それによって上手くバランスが取れていくこともあるんですよね」